2020年7月27日

【誠のFACT】カクタス日本法人は原則リモートワークに移行しました

(湯浅 誠/カクタス・コミュニケーションズ株式会社 代表取締役)

 

カクタス・コミュニケーションズの日本法人は7月から全社員を対象に原則在宅勤務制度を導入し、希望者はコロナ禍が収束しても職務や職位に関係なくリモートーワークができるようにしました。3月から開始した在宅勤務に特段支障がなく、社員満足も高かったので思い切って導入したところ、日本法人の9割以上の社員が在宅勤務を希望しました。永久的な全社在宅勤務制度の導入はカクタス・グループ全体で日本が初の試みです。この動きでどう社員の生活に影響が出るのか非常に楽しみにしています。

在宅勤務制度の導入は傍から見ると企業コスト削減になると思われがちですが、実際はそうでもありません。私達の場合、在宅手当として社員一人あたり1ヶ月に15,000円支給することを決定しました。これは毎月の定期代の平均額より高く、定期代を支給している方が現実的には安くすみます。オフィスのランニングコストはある程度削減できますが、目に見えて大きく下がるとは思っていません。事実、本社人事部と今回の制度を話し合った結果、明確なコストメリットは証明されませんでした。

ではなぜそれでも進めたのかといいますと、会社として可能な限り社員一人一人により多くの働き方のオプションを提示して、裁量を与えることで、より高いパフォーマンスを目指したいからです。そして、在宅勤務の導入は日本の企業にありがちな伝統的な労働環境や人事評価制度を見直す最高のチャンスだと考えています。

 

労働時間とパフォーマンスは比例しない

日本の古い労働文化では、仕事の質や成果よりもどれだけ働いたかという労働時間で評価されるべきという風潮が、雇用する側にも社員側にもいまだに根強く残っています。これは今の世界基準とはかけ離れています。労働時間と労働の成果は必ずしもイコールになりません。にもかかわらず、同じ時間に会社に来て同じ時間に帰らなければならない、あるいはより長時間働くほど給料が良くなるというルールや信念が存在するため、本当は4時に仕事が終わっても6時まで会社で時間を潰したり、不要な残業をしたりと時間を無駄にしてしまいます。最悪なケースは、企業が長時間労働をしている社員を贔屓にして、誤った評価をすることです。

今世間では「リモート勤務管理ツール」なるものが注目を集めていますが、これもまた労働時間で社員のパフォーマンスを評価する日本の古い企業体質の現れです。社員がパソコンの前に座って仕事をしているかをチェックするために、タイピング記録やモニターのキャプションを取ったりする管理ツールを導入する企業が増えているようですが、これでは本末転倒です。本来のリモートワークが持つ意義は、社員個人に自由と裁量を与え、出勤や勤務時間の制約から解放することで無駄を減らし、個人のパフォーマンスと幸福度を高めることです。そんな社員の行動を縛るだけの管理ツールに費やす予算があれば、売上アップにつながる別の活動に使うなりすべきだと感じます。カクタスでは、在宅勤務の導入に伴い、不必要な時間管理自体を可能な限りやめる方向に向かっています。社員には1日のうちで自分に最適な時間に業務に集中してもらい、早く仕事が終われば自分の好きな事に時間を使って、生活を充実させてもらいたいのです。

 

最初に信頼を示すべきは会社である

会社と社員は信頼ベースで働くのが基本です。互いが信頼できないのであれば、妙なシステムで管理するよりも、話し合って改善を促すか、お互い別の道を歩むほうが健全です。そして、最初に信頼を示すべきは会社のほうです。会社側が社員への信頼をわかりやすい形で示さなければ、何事も変わらないと思います。カクタスでは、今回、日本で他のオフィスに先駆けて原則リモートワーク導入を提案した際、本社の取締役達や人事との話し合いの中で「リモートワークにして社員はちゃんと仕事をしてくれるだろうか?」という疑問をだす人は一人もいませんでした。「何か新しい問題が起きたらその時正せば良いのだから、それよりもまず社員に自由を与えて、仕事をしやすい環境を整えよう」と、誰もがサポートしてくれました。

社員に自由と権利を与えるということは、逆に彼らはその自由への責任を負う事になります。時間で管理しないということは、業務の結果で個人のパフォーマンスを判断をすることになります。リモートワークが進めば進むほど、社員個人個人の実力が明確にわかり、それが何を意味しているかは会社と社員でしっかり議論していく必要があります。リモートワークが当たり前になれば人事評価もその前提で行うので、この点については社員一人一人が自己管理の責任を負う点は強調したいと思います。同時に、会社側の評価システムも、今までの延長上ではなく大きく変わる必要があり、新しい方法を模索して古い考えを変えていかなければなりません。この変革に踏み切ったことは、私たちは個人として、組織として、新しい環境に合わせて最良の選択をすることができるという信頼に基づいているのです。

リモートワーク の導入は、日本の企業が古い体質を見直す最高のチャンスです。実施してみると様々な新しい問題があるとは思いますが、1年以上続けたら必ず何かいいヒントが出てくると思います。

 

人生で挑戦したいことに制限を設けない

リモートワーク導入に対する私自身の個人的な関心は、実は働き方よりも社員の生活の変化です。職場環境の変化は社員にとっては人生を見直すいい機会です。東日本大震災後に職業を変えた人がたくさんいましたが、新型コロナウイルスも人々の人生に同じ影響を与えると思います。「自分が本当にやりたい事は何だろうか?」「自分の人生にとって大切な事は何だろうか?」と、この機会に自分自身に問いかけてみてください。

「通勤がなくなりミーティングが減って、時間を効率的に使えるようになった」「オフィスにいる時のように周りの人に気を使わなくなったので業務に集中できる」といったちょっとした改善点もあるでしょうが、できればこの在宅勤務制度を、社員一人一人の人生を変える起爆剤にして欲しいのです。住みたかった場所に住めるようになった、やりたかった趣味ができるようになった、家族との時間をしっかりとれるようになった、など社員の生活に良い変化が起きて初めて効果があったと思える制度だと思います。

最近ある社員が、「在宅勤務を選んだので、マイホームを購入しました。広い家から働くのが今から楽しみです」と報告してくれ、嬉しく思いました。来月には「しばらく実家に帰省してそちらから仕事します。午前は子供と一緒に両親の畑仕事を手伝ってから勤務します」といった話を聞きたいなと思っています。またコロナ収束後は国内に留まらず、海外から働く事も可能性の一つになるでしょう。挑戦したいことに制限を設けず、楽しく人生を過ごすための方法を各自で考えてもらいたいと思います。

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これから半年以内で在宅勤務制度を導入する企業はある程度落ち着くと思います。またその可否が問われるのは1年後でしょう。会社としてはその過程で出てくる問題を一つ一つ解決をしていき、1年後に総括して今後どうするかを改めて考えると思います。社員は自分にとってよりよい環境を追究し、気持ちよく仕事をできるように絶え間なく工夫してほしいです。初めから完璧な制度などありません。一緒に考えながら改善していき、来年にはカクタス・モデル(最近のコロナ対策で聞く、自治体長が使うフレーズの真似です、笑)を確立させ、世の中に一石を投じていけたらいいなと思います。

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