2020年8月5日

【誠のFACT】事業変革の時代

(湯浅 誠/カクタス・コミュニケーションズ株式会社 代表取締役)

 

新型コロナウイルスは、多くの業界、世界中の企業の運命にあまりにも多くの影響を与えていますが、同時にこれほどまでに各企業の体力と柔軟性を世間に明るみにした出来事はこれまでになかったと思います。

影響を受けた業界は数知れません。とりわけ観光業や飲食業は大変なダメージを受けています。「もう会社が持ちこたえられない。このままでは廃業するしかない」という声をニュースで何度も聞きました。しかし同時に売上を伸ばしている業界があることも事実です。例えばネット通販や宅配業界はコロナ禍の外出自粛を受けて業績を伸ばした業界です。Uber Eatsは特に状況とサービスが非常にマッチしたケースでしょう。海外では配車アプリとして有名なUberですが、古くからのタクシー・ハイヤー業界が確立されている日本では新興の配車アプリ企業が参入して市場を作るのは相当に骨の折れる事業です。そんな中、先に普及の兆しを見せたのがUber Eatsでした。日本ではまだあまり盛んではなかったフードデリバリービジネスは、新型コロナの影響で一気にニーズが噴出したと思います。あのまま配車アプリだけに拘っていたら、Uberはコロナ禍で更に悲惨な事になっていたと思います。

私は現在会社のブランディング部を担っていることから、昨年からブランド・コンサルタントの専門家の先生についてゼミに参加しており、海外の様々な企業のブランド事例を学んでいます。その中でも衝撃を受けた話は、ヨーロッパで新型コロナウイルスが猛威をふるって爆発的に感染者が増えていた3月ごろに、世界の名だたるアパレルメーカー各社がノーブランドでアルコール消毒液やマスクの製造にいち早く取り掛かり、医療機関に無償提供しているという事実でした。ヨーロッパの有名自動車メーカーもまた、足りないと言われていた人工呼吸器の生産を開始し、そのスピードと転換の速さに驚きました。危機の時こそ時代のニーズを掴んで、企業の存在価値を柔軟に変化させられる企業に勝算があります。

国内の例では、最近話題になったのがユニクロのエアリズムマスクです。すでにマスクバブルが崩壊して、中国から大量に仕入れたマスクの価格が暴落し、またどこの薬局でもマスクが普通に購入できる状況なのに、ユニクロに新開発のマスクを求めて長蛇の列ができました。ピークから少し時間が経過したので遅いかも?と思った方もいたかと思いますが、マスクのニーズは今や世界規模で拡大しているので、恐らくユニクロはこのニーズは長期的なものだと認識したのでしょう。コロナ禍でほとんどのアパレル企業は苦境を強いられている中、ユニクロはネット販売の強化と新商品の開発で迅速にニーズを掴み、他社と比較してかなり善戦していると思います。

飲食業界では店内での飲食が制限され、いち早く持ち帰りやネット注文できるデリバリーサービスを始めた店舗がかなりありました。こんなに企業がウェブの力を実感したこともこれまでにありませんでした。ぐるなびや食べログにだけ出店していた飲食店は、この機会にUber Eatsに出店して新たな顧客の開拓につながったかもしれません。そこにとどまらず、一歩進んで独自のサイトとデリバリーサービスを立ち上げた店舗もあります。新たなグルメポータルサービスを始める企業も次々出てくるでしょう。中には、飲食店経営から始まってグルメポータルビジネスへ、そこから飲食店向けの集客ビジネスのコンサルに展開する経営者が出てくる可能性もあるかもしれません。

私のブランディング部では、勝手に「社内バーチャル推進部」を立ち上げました。コロナ禍で多くの社内業務がオンラインになったことを鑑みて、会社のブランド戦略のヴァーチャル化が緊急の課題だと考え、各部署に「業務のオンライン化で困ったことはありませんか?なんでも相談に乗りますよ」と声をかけたのです。すると、「採用面接をリモートで行っているので、会社の様子や雰囲気が採用候補者にうまく伝わらない」「営業会議でスタッフの私生活がクライアントに見えたりして会社ブランドイメージに統一性がない」といった相談をいくつか受けるようになりました。課題を聞いて対策を考え、同じ課題が多部署から来る場合は継続的なニーズがあると想定して解決策を提案するなど、色々な実験を日々行っています。不思議と新しい事をやっていると他部署から違う事で相談を受けたり、「これできない?」と相談が来ます。ブランディングチームでありながら社内便利屋も務める部署になりつつあります。

産業の変革は、多くの場合社会的な苦境や世の中が大きく変化するタイミングで起きるものです。企業は同じものを同じ方法で売り続けるのではなく、時代の変化に応じて変わっていかなければ生き残れません。「自分たちは〇〇屋だから」とこだわるより、「コロナ禍で挑戦した新しいプロダクトやサービスが、今後ビジネスに発展するかもしれない。さらに先に進んでみようか!」とあえて前に進めてみることで、企業が大躍進するチャンスになるでしょう。

コロナ禍で非常に多くの企業が苦境に立たされています。悲観的になり政府を批判することはいくらでもできますが、根本的な問題解決は誰にも頼れない状況です。このピンチは逆に自分たちを変えるチャンスになるかもしれません。変えるか維持するかで迷っている方がいたら、事業を変革してみるべき時期だと思います。

Welcome changes for a better future!

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