2020年6月3日

【誠のFACT】リモートワークで人生を最適化する、働き方の3つのボーダーレス化

湯浅 誠 /カクタス・コミュニケーションズ株式会社 代表取締役

 

新型コロナウイルス感染症の影響で、在宅勤務を推奨する企業がかなり増えたと思います。カクタスでは、すでに3年前から全部署で在宅勤務ができる体制にしており、今回も非常事態宣言が出された4月7日よりも1ヶ月早い3月から、早々に全社員を原則在宅勤務に移行させることができました。6月になり宣言は解除されましたが、引き続き在宅勤務を継続しており、7月以降はこの経験を踏まえ今までとは違う新しい勤務形態を導入する予定です。

東京に外出自粛要請が出ていたこの3ヶ月間、私は家族を連れて静岡にあるマンションから仕事をしてきましたが、その中で色々な発見や学びがありました。6月から子供の幼稚園が再開するとのことで5月末に都内に戻ってきましたが、この機に改めて居住地に対する考え方、仕事とプライベートの垣根についてあれこれ考え、実際に様々な方法を試していました。その結果、これまで当たり前だと思っていた働き方の大部分が思い込みにすぎないと気づきました。たどり着いた、人生を最適化するための働き方の3つのボーダレス化についてまとめました。

 

(1)都心と地方のボーダレス化

滞在していた静岡のマンションは高地にあるため周りにお店が一切なく、近くのスーパーまで車で20分以上はかかります。遊び盛りの子供に欠かすことのできない遊び場も歩いていける距離にないため車での移動が必須です。そういった利便性のデメリットはあるものの、田舎暮らしは家からの景色が抜群で、マンションの窓から大きくそびえたつ富士山を眺めることができたり、大きな公園で好きなだけ子供達をのびのび遊ばせられるなど多くのメリットもありました。

都会を3ヶ月離れてみると、東京と地方暮らしのどちらが自分や家族に向いているのかと疑問がわいてきました。私にとって都内に暮らす一番の理由は会社と家の近さです。これまで経営者として、いざという時にオフィスにすぐに行ける距離に居を構えることを重視して来ましたし、実際、東京の家はオフィスから徒歩圏内に置いています。

仮にリモートワークを継続する場合、この理由が今後意味をなさなくなります。会社に毎日行く必要性がなくなるのなら、東京の狭い家で暮らす意味はあるのか?子供達の教育には自然があり、わいわい遊べる田舎の方がいいのではないか?急に今まで頭になかった、東京から通勤圏内にある環境のいい田舎に永住するという選択肢が生まれたのです。実際、家族と一緒に将来住みたい土地と物件をかなり調べて絞り込んでみました。移住するとなると子供の学校をどうするかという問題があるのですぐには決められないですが、今後の人生の選択肢が増えたことは確かです。

これまで人々の生活拠点は、職場=仕事を中心にデザインされてきました。東京に会社があるから都心から1時間半以内で通える場所で暮らし、生活の半径を仕事に支障がでない距離に合わせてきたはずです。しかし、職場=仕事ではなくなり、職場=自宅という発想で生活をデザインすると、人生の可能性が一気に広がります。仕事を続けながら、必ずしも仕事を人生の中心に置くことなく、やりたいことや趣味、住みたい場所、家族の夢を働きながら同時に叶えられるかもしれません。例えば湘南や千葉の海で朝サーフィンを楽しんでから自宅で仕事をし、週1回オフィスに出勤する、なんてライフスタイルも難しくありません。そうなれば、会社に時々来て同僚とキャッチアップすること自体も楽しみの一つになるのではないでしょうか?

 

(2)仕事とプライベートのボーダレス化

さて、未就学児をお持ちでリモートワークをしていた方には共感していただけると思いますが、子供の世話をしながら仕事の時間を確保するのは簡単ではありません。私自身、毎日買い物と子供達を公園に連れていく任務があり、車での往復を含めると毎日2時間は勤務時間中に外出する必要がありました。元々出張や外出が多いので移動の合間に携帯からメールをチェックする事はありましたが、ミーティングは度々拒否せざるを得ませんでした。当初は皆が仕事をしている時に自分だけ外出している事に罪悪感を抱き、それが「自分は果たして職務を全うできているのか?」という自己疑念へ発展し、完全に自信を亡くしてしまった時期がありました。

本社HRに紹介してもらった外部カウンセラーに相談したところ、彼女は私の話を聞いた後でこう言いました。「あなたと同じ問題を抱えている人は今世界中にたくさんいます。でも罪悪感を持っても何も意味はありません。仕事にとって大切なのは、かけた時間や働いた場所ではなく、どんな結果を残せたかです。子供との時間を十分取って、結果的に仕事ができればそれでいいし、罪悪感なんて変な感情を挟む必要はないと思いませんか?それよりも、この現実を受け入れて、与えられた環境で効率的に仕事をする方法を確立するべきではないでしょうか?」この言葉で、自分がいかに「こうあるべき」という思い込みで仕事をしていたかに気づいてハッとしました。

それから早速、自分らしい仕事のサイクルの確立に取り組みました。まず毎朝普段より1時間早く起きて、9時にはメール返信を全て終え、午前中に子供を連れて公園へ。子供に昼食を食べさせ、午後から夕方までまた仕事。夕方にスーパーへ行き、家族と夕食を済ませた後の8時から10時過ぎを仕事に当てる・・・という早朝・午後・夜の3サイクルを作りました。仕事とプライベートのボーダーラインを限りなく取り払うことで、時間にとらわれず必要なことを必要な時に行う、新しいライフスタイルにシフトしつつあります。

とかく日本では9時5時の概念が強く、遅刻せずに会社に来て、勤務時間以上に頑張って働くことがよしとされる労働文化があったと思います。しかしリモートワークが浸透すれば、何時間働いたかよりもどんな結果を残したか、つまり本当の個人の実力がもっと評価されていくでしょうし、日本がそういう社会になることを期待しています。その代わり、社員にはその自由と引き換えに、自分で自分の日々の仕事とスケジュールをマネージメントして結果を生み出すための自律が求められます。同時に、上司は離れた場所で過剰管理になることなく、自分の部下の才能とパフォーマンスをどう引き出すのか、リーダーとしての実力が問われます。立場に関係なくキーとなるのは、前提としての会社と社員の信頼関係です。

 

(3)デスクとモバイルのボーダレス化

当然、中には時間調整が厳しい打ち合わせもあります。例えば取締役が集まる重要な会議には、さすがに「子供を公園に連れていくのでリスケをお願いします」とは言えません。そこで、家族と日中外出する時もパソコンを常に携帯して、遊んでいる子供を視界に入れながら公園の駐車場でミーティングをしたり、運転中にスマホを使ってハンズフリーで会議に参加するようになりました。

時間と場所にとらわれない働き方においては、仕事ツールのモバイル化も重要な鍵でした。パソコンは一定時間デスクで働くことが前提のツールです。しかし1日のうち誰にも邪魔されない仕事の時間を確保することは至難の技です。移動しながら働くためには、スマホが大変重要な役割を担います。

そこで、仕事に必要なアプリを全てスマホにインストールして、パソコンと遜色ない作業環境を作りました。スマホは車で充電できるので、いつどこでも仕事ができるようになりました。私の場合、ものを考えて判断し人に指示を出すことが仕事の大半を占めるので、これでかなり事足ります。今では「仕事のモバイル化」そのものが自分の趣味となり、パソコンが横にあるのにもかかわらずあえて小さいスマホ画面に向かってポータブルキーボード(しかも折り畳みができる超軽量版)と携帯ホルダー(これも折り畳み可能)で仕事をしたりと楽しんでいます。

もちろん全ての人がパソコンなしで用を足せるとは思っていません。しかし自分が置かれた環境ともてるツールを駆使して、どうしたら仕事とプライベートを両立するために環境を最適化できるかを本気で考えて工夫すれば、誰にでも自分に合った働き方を見つけることは絶対に可能だと思います。

これまでは、オフィスにいる時間が働いている時間、家では家族との時間、外出中は特別な用事を済ませる時間、と明確に切り分け、隙間時間は仕事の時間としてカウントされていなかったと思います。それが今やテクノロジーを駆使することで、どこにいて何をしていても、細切れの時間を利用して仕事ができるようになったのです。企業はこの機に社員一人一人のライフスタイルに合わせて、彼らがどこにいても仕事ができる環境を提供する努力をすべきだと思います。一方で社員もまた、これまで失われていた隙間時間をいかに活用して仕事の生産性をあげられるかを考え、会社に積極的に最適化を提案していく努力が必要です。企業と社員が協力し合い、ベストな環境整備をしていく必要があると思います。

 

最後に:自分にとってのニューノーマルを発見するために

リモートワークによるボーダレス化のポジティブな点ばかりを取り上げて来ましたが、最後に一つ大切な点があります。リモートワークによって得られる自由と引き換えに私たちが同時に受け入れるべき変化は、プライベートと仕事の統合であるということです。従来の勤務時間にプライベートな活動を組み込む自由を得るということは、同時にプライベートな時間に仕事の責任を果たす義務も伴います。

最近は海外オフィスとの仕事がメインなので、夜遅くにスマホに突然仕事のチャットや電話が来ることは日常茶飯事です。日中に子供の世話をしている時も、他のスタッフの仕事に影響が出ないよう、メールは常時チェックして、瞬時にレスをしています。必要があれば電話をかけ、家族と過ごす時間に仕事の長話をすることもあります。何事にも対価はつきものですが、自由な暮らしが謳歌できるのであれば、100%仕事とプライベートを分けない生き方も選択肢になると思います。自分のアイデンティティを分裂させるあらゆるボーダーラインから自由になり、1日の中に仕事や趣味、家族などの多様な生きがいが時間と場所を超えて分散された、新しい生き方の可能性が開けるのではないでしょうか。そこには、今までより人間らしい暮らしが待っているかもしれません。

新型コロナウイルスの蔓延を機に生まれた働き方のニューノーマルを実現するためには、行動パターンの変更と共に、人々のマインドセットの変更も必要になると思います。皆さんの会社がどのように変わっていくかわかりませんが、カクタスは常に時代によって変わっていく会社にしたいと思います。そのために重要な点は、世の中にはすでに、自分がしたい働き方を実現するためのシステムやテクノロジーが存在する事を知る事です。それらを有効活用して、古い慣習や精神論にとらわれず、仕事をとことん効率化、軽量化させること。この発想なくして自由な働き方はないと言えるでしょう。

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